男性不妊
2017年07月06日更新 2017年04月03日公開

男性不妊の治療とはどのようなもの?

男性不妊と診断された場合、もうお子様をつくることができないのかと落ち込んでしまいがちです。しかし、治療法や対処法なども複数あり長期的な治療を行える場合もあります。男性不妊治療についてドクター監修で解説します。

監修医師

この記事の監修者
 サズカル参画ドクター 先生

お子様を希望し1年間通常の性行為を行っても妊娠しない場合、不妊症が疑われます。現在では、お子様を望む夫婦のうち6組に1組が不妊症であると言われています。不妊症の原因の約半数が男性サイドにあり、これが男性不妊です。男性不妊の治療にはどのようなものがあるのか見てみましょう。

男性不妊とは

男性不妊とは、男性側になんらかの理由でお子様ができにくい、もしくはお子様ができる可能性が低い状態をいいます。

男性不妊の種類

男性不妊はその原因によりいくつかに分類されます。

無精子症

無精子症とは、精液中に精子が全くいない状態をいいます。

乏精子症

乏精子症とは、精液の中に精子の数が少ない状態を言います。国際基準では、精液1mlの中に精子数が1500万匹未満、または1回の射精の中に精子数が3900万匹未満の場合、乏精子症と診断されます。乏精子症の代表的原因として、後に述べる精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)があります。

精子無力症

精子無力症は、精子の運動性が悪くて妊娠に至らない症状のことを言います。国際基準では、前進運動する精子+運動しているが前進しない精子の割合が40%未満、または前進運動する精子の割合が32%未満の場合、精子無力症と診断されます。一般に精子数が少なくなると精子運動性も悪くなる傾向があります。

勃起・射精障害

男性の性機能は、性的興奮→勃起→オルガスムス→射精という順に経過します。勃起障害はEDとも呼ばれ、勃起時のペニスの硬さが不十分で性行為ができないもの(中折れ)をいいます。射精障害とは、射精自体ができないもの、射精が速すぎるもの(早漏)、マスターベーションはできるが膣内で射精ができないもの、オルガスムスは感じるが精液がでてこないものなどに分類されます。いずれにせよ、正常の性行為ができないため男性不妊となります。

男性不妊の検査をする

男性不妊であるかどうかを知るためには、検査が必要となります。その中でもっともポピュラーな検査が精液検査です。精液検査は、不妊専門の産婦人科クリニックでも受けることができます。2~7日間禁欲して(射精をガマンして)、マスターベーションで専用の容器に精液を採ります。精液検査で異常があった場合は、男性不妊専門の泌尿器科医を受診する必要があります。男性不妊専門の泌尿器科では、問診、身体の診察に引き続き、精液検査をもう一度調べ、さらに血液検査でホルモン、染色体、遺伝子などを調べます。精液中の精子の状態は体調によって変わります。そのため、精液検査は日を替えて複数回行うことが薦められます。

男性不妊の治療について

精子の状態が悪い男性不妊と言われた場合、最終的には人工授精(AIH)、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)といった補助生殖医療を産婦人科の先生にお願いすることになります。男性サイドの治療としては、(1)日常生活の改善、(2)お薬の内服による内科的治療、(3)手術による外科的治療があります。

産婦人科での生殖補助治療

奥様の卵子と精子が出会う確率を上げるための人為的な治療が産婦人科での生殖補助治療です。まず、人工授精(AIH)です。AIHは、採取した精子のうち運動性のいいものを選んで、奥様の子宮の中に注入する方法です。膣内に射精する通常の性行為よりも、卵子に出会うまでに精子が泳ぐ距離が短くなります。AIHで妊娠しなかった場合は、卵子を体外に取り出して試験管内で精子と卵子を出会わせて受精させ、受精卵を子宮に戻す体外受精(IVF)が必要となります。それでも妊娠しない場合は、マイクロピペットに取った1匹の精子を卵子に強制的に入れる顕微授精(ICSI)というもっとも高度な方法が必要となります。

内科的治療

  • 日常生活の改善

タバコは明らかに精子の数を減らします。さらにタバコは奥様にも生まれてくる赤ちゃんにも有害です。父親/母親になろうと決めたら夫婦でキッパリ禁煙しましょう。精子は精巣(睾丸)で造られます。精巣を温めると精子が悪くなります。長時間の風呂やサウナは避けましょう。パンツもトランクスタイプに替えて、精巣を身体から離なし体温で温めないようにしましょう。内服の育毛剤の中には精子の状態を悪くするものがあります。処方医に相談してください。

  • お薬の内服治療

漢方、亜鉛、リコピン、カリクレイン、コエンザイムQ10、ビタミン剤などの内服治療が経験的になされています。ただしこれらの内服治療で、精子の数が確実に増えるという証拠はありません。精巣にある精子の元になる細胞が精子になるには約74日かかるとされ、これらの内服治療は何か月も継続する必要があります。

外科的治療

  • 精索静脈瘤手術

乏精子症の原因として精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)があります。これは精巣のまわりの静脈(血管)に血がたまって精巣のまわりが腫れるもので、おもに左側に生じます。自覚症状は無く、泌尿器科専門医の診察でわかります。血がたまることで精巣の温度が上がって精子を造る力が弱まります。手術で血のたまりをなくすと、精巣の温度が下がり精子の数が増え妊娠につながります。

  • 無精子症の分類

無精子症は、「閉塞性無精子症」と「非閉塞性無精子症」とに分けられます。閉塞性無精子症とは、精巣で精子が造られているのに、精子が精液中に出てこない状態です。非閉塞性無精子症とは、精巣で精子が造られていない状態です。精巣のサイズが大きく、ホルモンのバランスが崩れていなければ閉塞性無精子症、精巣のサイズが小さくホルモンのバランスが崩れていれば非閉塞性無精子症と診断されます。

  • 閉塞性無精子症の治療

閉塞性無精子症の治療としては、精子の通り道(精路)をつないで精液中に精子を出させるようにする手術(精路吻合術)と、奥様の卵子と顕微授精(ICSI)させるための精子を精巣から直接取り出す手術(TESE)があります。精路吻合術のうちの代表的なものは、避妊のためパイプカット手術をしたが、もう一度お子様を希望された場合に行なわれる「精管を繋ぎ直す手術」があります。この手術は顕微鏡を用いての高度な専門的手術となり、数日間の入院が必要となります。手術により精液中に精子が出てくる率(精子出現率)は約80%と高く、この手術が成功すれば通常の性生活による妊娠が可能となります。手術後に精子が出て来ない時の保険として、手術中にTESEを同時に行い精子を凍結保存することも行われています。精路吻合術ができない閉塞性無精子症に対してはTESEが唯一の治療法となります。TESEには顕微鏡を使って精巣内を丹念に調べる「マイクロTESE」と、顕微鏡を使わない「C-TESE」があります。閉塞性無精子症の場合は簡便なC-TESEが主に行われ、精子採取率は90%以上です。

  • 非閉塞性無精子症の治療

非閉塞性無精子症の原因はまだ十分解明されていませんが、遺伝子異常がもっとも有力視されています。ですので、非閉塞性無精子症では、染色体検査(採血)や遺伝子検査の一つであるAZF検査(採血)がすすめられます。TESEという先進的治療法が一般化する前は、非閉塞性無精子症の場合はお子様を諦めるしかありませんでした。しかし、TESEをやってみると、非閉塞性無精子症であっても精巣内にわずかに精子が造られている部位がある例がいることが分かってきました。非閉塞性無精子症に対するTESEは「マイクロTESE」によって行われます。マイクロTESEでは、顕微鏡を使って精巣内にわずかに精子が造られている部位を探します。マイクロTESEでの精子採取率は30~40%に留まります。

  • TESEで採取された精子を用いた産婦人科での顕微授精(ICSI)

TESEで採取された精子はほとんど前進運動をしていません。したがってその中の精子1匹をマイクロピペットに取って、奥様より体外に取り出された卵子に強制的に注入する「顕微授精(ICSI)」という先進的な治療が行われます。ICSIによる受精率は50~70%、受精卵を子宮に戻しての妊娠率は約30%です。一般に、閉塞性無精子症に対するC-TESEでは大量の精子が採れるのに対して、非閉塞性無精子症に対するマイクTESEではわずかな精子しか採れません。したがって、非閉塞性無精子症ではICSIができる回数が限られます。いずれにせよ、遠慮せずに男性サイドを担当する泌尿器科と女性サイドを担当する産婦人科の主治医と、よく話し合うことが大切です。

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